もえもえ図鑑

2006/10/26

右脳buffer - 「名君双六」(6)イントロ

このページの原稿は書きかけのものです。正式公開の時点で、大幅に改稿されていたり、あるいは未完のままお蔵入りする怖れがあります。このページの内容は時々書き換わります。完成すると内容は正式な掲載場所に移設されます。

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 紅い夕日の中にあるタンジールの四つの尖塔(ミナレット)は、濃い陰影の中に沈んでいた。暗く翳(かげ)り、砂丘に長い影を引いて立つその姿は、はるかな昔、太祖アンフィバロウが、その双子の兄ディノトリスと共に眺めた時と、ほとんど変わらないはずだ。
 彼らは早暁に辿り着き、朝日の中に浮かび上がったこの光景を目にした。そして最初の竜の涙であり、この都市の在りかを千里眼の魔法によって教え導いてきたディノトリスは、麗しの(フラ)タンジールと言い残し、都市の内部を見ることなく絶命したと、部族史には伝えられている。
 後に族長として即位したアンフィバロウは、詩人に命じて、亡き兄の偉業を叙事詩に詠ませた。それが部族で最初の英雄譚(ダージ)だ。はじめ口伝であったものが、やがて書き記され、今や千里眼のディノトリスの英雄譚(ダージ)は永遠のものとなった。その名と偉業を知らぬ者はない、英雄の中の英雄だ。
 だがディノトリスがどんな人物であったかを知る者は、もうどこにもいない。彼が何を感じ、何を夢見て、この都市を魔法の目で遠望したのかは、誰にも分からない。ただ墓所に眠る彼の石だけが、その苦痛を今に伝え、彼が確かに実在していたことを証している。
 ディノトリスは実は千里眼ではなく、未来視だったのではないかという説をとる者も、宮廷の博士たちの中にはいた。議論好きの魔法戦士たちの間でも、時折その話は話題にのぼった。
 太祖と双子の兄がこの地に辿り着いた時、タンジールは廃墟だった。それに、ディノトリスが実際に目にしたのは、都市の入り口に建つ四本の尖塔(ミナレット)だけだ。それを見て、なぜ、麗しの(フラ)タンジールと言ったのか。
 彼が視ていたのは、その時目の前にあった光景ではなく、その後に太祖が開いた玉座の間(ダロワージ)の美と、そこから治めた王都の繁栄を未来視したものだったのではないかというのだ。
 魔法は曖昧なものだった。術者が視たものが、遠方にある今現在なのか、それとも、そこへ辿り着いた自分がいずれ見ることになる未来の光景なのかは、明確には分からない。ひとつだけ確かなことは、ディノトリスが、魔法によって視た遠い王都に辿り着こうとして旅立ち、そして成功したという事だけだ。
 森の奴隷として生まれ、穴掘り(ディガー)と蔑まれながら視た夢の中の都市に、決死行の果てに到達したことにより、ディノトリスは英雄となった。しかし彼は末期的な病身で、とても一人ではその偉業を成し遂げられなかっただろう。
 自分の目で遠視したわけではない弟アンフィバロウが、砂漠の向こうにその都市はあるという、兄の言葉を信じ、皆を率いて苦難を乗り越えてくれたからこそ、ディノトリスはこの場所でフラ・タンジールと呟くことができたのだ。
 兄と弟の、どちらが欠けても、部族の民は王都に辿り着く事はなかった。
 以来、部族の者たちは、玉座に連なるアンフィバロウの末裔たちと、ディノトリスの魂の後裔である竜の涙たちは、深い信頼と忠誠によって結ばれてあるべきと考えている。それによって部族に勝利と繁栄がもたらされると、皆は信じているのだ。

《執筆ちゅう》
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